- Sakurako Tanaka BCBA-D
弱化(罰) 使用上の注意
弟のおもちゃを取り上げた長男を、きつく叱った。
授業中にお喋りをしていた生徒に、腕立て伏せをするように伝えた。
落書きをした生徒に、ゲンコツした。
このように弱化は日常生活で非常によく使われています。弱化は行動を減らす手続きですが、子供のための指導であればどんな弱化でも本当に倫理的に許されるのでしょうか?

弱化の危険1)
弱化を受けた人は暴力的/抑鬱的になることがある
弱化は子供に苦痛をもたらします。苦痛が続くことによって、不安・恐怖・怒り・抑うつという感情が芽生え、攻撃的になることが研究でわかっています。
そもそも発達障害をもつお子さんは成功体験を積む機会が少なく自己肯定感が低い場合が多いです。二次障害を起こさないためにも、このような苦痛を伴う手続きを行わないようにしましょう。

弱化の危険2)
弱化をした人を嫌いになり人間関係が破綻する
体罰は子供に苦痛をもたらします。怒られた内容を理解し、その行動を改めたとしても、体罰を行った人を苦痛を与える人だと認識してしまう可能性があります。
その場合、その大人を嫌いだと思い人間関係は崩れると、その後の課題などのコンプライアンスが極端に悪くなることがあります。教育や療育現場でもそうですが、家庭内で人間関係が悪くなると親にとっても子供にとっても安らぎの場である家庭が壊れてしまう危険があります。

弱化の危険3)
弱化がエスカレートして虐待につながる危険がある
人は刺激に慣れていきます。最初は手を軽く叩いただけでお子さんの問題行動が収まっていたとしても、徐々に強く叩かないと収まらない、怒鳴らないと収らないなど、怒られることに慣れていってしまいます。それによって、体罰がエスカレートしていく危険があります。
また大人も同じく慣れていきます。体罰はいけない‥と思っていても、軽く叩くだけだし。一回だけだから。と体罰を与えることに慣れていくことからもエスカレートしていく危険があります。

弱化の危険4)
弱化を受けた人が弱化を使用することを学習してしまう
人は行動を「学習」します。お子さんが授業中関係のないおしゃべりをしてしまうなど不適切な行動をしたとして先生から叩かれた場合、「ルールに反したことをした人は叩いても良い」という行動を学習してしまいます。
叩かれたお子さんは、公園で滑り台の順番を抜かされたなどルールを守らない子供がいたらその子供を叩いてしまうかもしれません。子供は大人の行動をよく見ています。私たち大人は子供の見本になる行動を常に行うよう心がけましょう。

弱化の危険5)
弱化を避けるために不適切な行動が増える
体罰を受けたことによりその行動が良くないことだと理解しても、体罰を避けさえすれば何をしても良いと考えてしまう危険があります。
体罰をする大人の前だけでいい子に振舞ったり、体罰を避けるために嘘をついたり物を隠したり。体罰を行うことでこのような不適切な行動を増やしてしまう危険があります。

弱化の問題点:弱化は、正しい行動を教えない
このように弱化は悪い行動を減らす作用はありますが、じゃあどうしたらいいのか?という適切な行動を教えてはくれないのです。

本来どうすべきであったかを教えよう!
その子供が本来すべきであった適切な行動を教えましょう。
弟のおもちゃを取り上げた長男に、「貸してって言って順番に使おうね」。
授業中にお喋りをしていた生徒に、「お喋りは休み時間にしようね」。
落書きをした生徒に、「みんなの場所は綺麗に使おうね」。
そして、その適切な行動ができたら、たくさんお子さんを褒めてあげてください。
行動の後に良いこどがあると、その行動は増えていきます。適切な行動を教え、それができたときこそ、行動を増やす介入をしてあげましょう。これを正の強化と言います。

まとめ
弱化の危険と、代わりに使いたい正の強化について解説しました。ABAスクールTogetherでは、行動の原理・ABAの理論を広く学び、ABA国際資格であるRBTの取得を目指すことができます。是非私たちのサイトで学んで見てください。
Reference
応用行動分析学 – 2013/5/30ジョン・O・クーパー (著), ティモシー・E・ヘロン (著), ウイリアム・L・ヒューワード (著), 中野 良顯 (翻訳)
日本行動分析学会 「体罰」に反対する声明
http://www.j-aba.jp/data/seimei2014.pdf