• Sakurako Tanaka BCBA-D

【寄稿文】聴覚過敏のある自閉症の息子が、映画館デビューした話


「今度はポケモンの映画行こうね!」映画館からの帰り道、こんな息子からの言葉を聞いて私の目頭は熱くなりました。プラネタリウムでの大絶叫、花火大会でのパニックなどの過去があったので、映画館に行くと決めた時も大きな期待はしていませんでした。見通しを持つのが苦手で初めてのところや暗いところなどを極度が怖がる特性や、大きな音を怖がる聴覚過敏を持つ息子と、楽しく映画館にいける日がくるとは正直思っていませんでした。普通のお子さんを育てていらっしゃるご家庭では想像もできないかもしれませんが「映画館にいく」ただそれだけのことが、自閉症を持つ子どもとその家族にとっては一大事なのです。

自閉症は「社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害」と「限定された反復する様式の行動、興味、活動」、この2つの領域に生まれながらにして問題を抱える脳の疾患です。言葉がなかなか出なかったり、人の気持ちを理解することが難しかったり、文脈から隠れている意図を読み取ることが難しかったり。その障害の程度はスペクトラムで同じ診断名を持っていても特性は人それぞれですが、概して状況を理解することが苦手で結果として見通しを持ちにくいという特徴を持つ人が多くいです。また音や感覚に過敏である人もいます。

自閉症そのものを治療する薬剤はなく、ABA(応用行動分析)に基づく介入で自閉症の中核症状が和らぎ、言語能力・コミュニケーション能力・社会性が向上することが言われており、西洋先進国では自閉症の標準療法として公費で受けられるほど一般的に活用されています。我が家は子どもが自閉症と診断されて以来、家庭で一貫してこのABAに基づく関わりをしてきました。今回は聴覚過敏があり見通しを持つことが苦手な息子がどのようにABAを使用し「映画館デビュー」できたのか紹介させていただきます。


見通しを持たせる

自閉症の子どもは変化に弱く、また新しいことに対し大きな拒否反応を示す場合が多い一方で、見通を持てることでそれらを克服できる可能性が大きく上がります。我が家の場合は、まず行く映画館を決め、その映画館を下見に行きました。ここがチケットを買うところ、ここが入り口、映画館の方にお願いして、開いているシアターを見せてもらい、ここに座ってみるということを教えました。


動機付けを高める

また映画のポスターを見せて、楽しみだね、と伝えました。そして映画の予告編を一緒に見ました。これは楽しい映画を見たい!という動機付けを高めるためです。選んだ映画はドラえもん。本人が好きで他の映画も何本も見ているのと、子どもむけ映画で極端な描写が少ないからです。


特性を逆に利用する

当日は17:00からの映画を予約しました。「予定を守る」「遅刻をしない」などルールに固執する特性を逆に利用し、17時からであることを朝に伝え、それに向けて1日を過ごしました。16時を過ぎたくらいから、映画だよ!遅れちゃうよ!と家族伝えてくれました。

非条件性強化子とのペアリング

映画館であまり手持ちぶさたにならないよう開始の10分くらい前に着くように行きました。普段は決められた時間とセラピーの時にしかお菓子は買わないことにしていますが、あえてポップコーンを買いました。大好きなポップコーンと映画館をペアリングすることによって、映画館を好きになってくれることを期待したからです。


環境調整

COVID-19の影響で映画館は空いていました。100名程度しか入れない小さめの部屋で客入りは2割程度、どこも小さな子ども連れのご家族でこれならお互い様で多少の声を出しても大丈夫だろうとちょっと安心しました。人が多いとそれだけでストレスになりますので非常にラッキーであったと思います。


スモールステップ

席についてポップコーンを食べ始めたくらいで、コマーシャルが始まりました。子どもむけのアニメのコマーシャルや、喋らない・前の人を蹴らないなど映画館のお約束など。驚いたのが、このコマーシャルの間は、部屋が暗くならないことです。これは非常にありがたく、いきなり暗くなるよりも、映像を見ながら劇場になれることができるからです。これは5分程度遅れて入室される方を配慮してもあるのだとは思いますが、どんな人でもいきなり暗くなると怖いので、ユニバーサルな配慮だなあと感心しました。いざ映画が始まる際には部屋は暗くなります。しかしその照明の落とし方は非常にゆっくりで、いつから暗くなったか意識していないとわからないくらいでした。これらはスモールステップとして機能していたと思います。

後日調べてみると、子どもむけの映画は、少し明るめの照明設定・音も小さめ、と設定している映画館もあるということでした。今回はそのような指定がないものでしたがもしかしたらそのような設定になっていたのかもしれません。このような見えない配慮は、普段は気づくこともないのですが、意識してみると本当にありがたく、さすがエンターテイメントのプロだなあと感心しました。

ドラえもんの映画は敵が出てきて怖い・音が大きいなどのシーンもないことはないですが、人が死んだりなどの怖いことはほぼなく初めての映画館としては非常にありがたい内容でした。


強化

終わった後は「良く頑張ったね!」と駄菓子屋さんで好きなお菓子を買って帰りました。映画など活動自体が楽しいものはそれ自体が強化子として機能するので追加の強化子はいらないというのが鉄則ですが、初回の経験だったのでさらに行動を強化させる目的にやりました。



帰りの車で、「楽しかった!今度はポケモンの映画行こうね!」と言ったのを聞いて、子どもの成長を感じることができとても嬉しく思いました。その後も保育園の先生に映画に行ったという話をしたようで、映画が楽しかっただけでなく、新しい経験をした自分に自信を持てたのではないかと思います。

ABAにおいては「強化子を広げるよう介入する」とことも大切なセラピーの一つであると考えます。自閉症の子どもは遊び方が独特であり、人と一緒に遊んだり、ごっこ遊びをするよりも、おもちゃを本来の機能として使用せず感覚に訴える遊びをしがちと言われています。また、親も公共の場で適切に振る舞えない子どもと外出することを躊躇する傾向にあります。子どもは自分の世界に篭りたがる、親は積極的に外に出そうとしない、この悪循環で子どもは様々な経験を積むことができず、成長の機会を持つことが難しくなります。まれに「うちの子、お菓子以外の強化子が効かないんです」という相談を受けることがあります。様々な活動や経験を通してしか強化子は増えていきません。工夫をしつつもいろんな経験をさせてあげることは大切なことだと思います。

もちろん、今回我が家が経験したようにうまくいく場合ばかりではありません。正直私自身は成功する可能性はあまり高くないと思っていました。もし絶叫するなど周りに影響が出るほど難しければ私か夫、どちらかが子どもと外へ出るつもりでした。無理ならまあいいや、と最初から完璧を求めずいろいろやってみることが親も本人も続けるコツなのではないかな、と思います。


発達障害の子どもの子育ては本当に大変です。しかし今回の子どもの達成感あふれる笑顔は、「どんな子でも成長できる」という当たり前のことを私に思い出させてくれてました。そして、こんな小さなことを喜びを感じられることこそ子育ての醍醐味だ、と、感じさせてくれたのです。

コロナの影響でなかなか思い通りに遊ぶことはできなかったけど、我が家の夏は、いい夏でした。


執筆

Satoko Takahara

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