お菓子が欲しくて泣き叫んだり、お着替えを嫌がって叩いてきたり、わざと牛乳をこぼしたり、ハンドフラッピングをしたり。
お子さんの困った行動をどうしたらいいか悩んでいませんか?
ABAを使用してお子さんの困った行動を減らす方法をお教えします。
行動の機能を分析しよう 獲得・逃避・注目・自己刺激
困った行動を減らすには、まずそのお子さんの困った行動がどんな機能を持っているのか理解することが必要です。
行動には「獲得」「逃避」「注目」「自己刺激」の4つの機能があります。
「お菓子が欲しくて泣く」という行動の機能は「獲得」
「着替えをしたくなくてお母さんを叩く」という行動の機能は「逃避」
「お母さんの気を引きたくて牛乳をこぼす」の行動の機能は「注目」
「退屈な時にしてしまうハンドフラッピング」の行動の機能は「自己刺激」
まずは、行動の前の出来事と、行動の後の出来事に注目して、その行動はどんな機能を持つのか分析しましょう。
困った行動の機能が「獲得」なら?

このお子さんはまだ言葉を上手に話すことが出来ません。
先生が持っているおもちゃが欲しくて身を乗り出して無理やりおもちゃを奪おうとしています。
まずここで大切なのはおもちゃを渡さないこと。
その代わりに、「おもちゃ貸して、って言ってごらん」と適切な行動を引き出す手助け=プロンプトを行いましょう。
「おもちゃ貸して」と言えたら、「上手に言えたね」と褒めておもちゃを渡してあげましょう(褒めておもちゃを渡すのが強化、褒め言葉とおもちゃが強化子)。
行動を起こしても良い事を起こらなければ、最終的にはその行動は減って行くと考えられます。これを消去と言います。
この例のポイントは「身を乗り出しておもちゃを無理やり奪おうとする」という困った行動と「おもちゃ貸して」という適切な行動の機能は同じ「獲得」だと言う事です。
身を乗り出しておもちゃを無理やり奪おうとしておもちゃを貸してもらえず、「おもちゃ貸して」と言うことでおもちゃを貸してもらえるのであれば、身を乗り出しておもちゃを無理やり奪おうとする困った行動は減り、「おもちゃ貸して」と言う適切な行動は増えていきます。
このようにしてABAを使用し困った行動を減らし適切な行動に置き換える事が出来るのです。
もしお子さんにとって「おもちゃ貸して」という言葉を言うことが難しいようであれば、絵カード等でもコミュニケーションを取ることが出来ます。
お子さんに合わせて少し頑張ったら出来る、という課題設定を行いましょう。
困った行動の機能が「逃避」なら?

このお子さんは先生と一緒に机で絵を描く課題に取り組んでいますが、先生が「お母さんの顔を描いてみようね」と言ったら泣き出してしまいました。
まずここで大切なのは泣いてしまったからと言って絵を描く課題を辞めない事。
もしここで課題を辞めてしまうと、泣くと言う行動をしたら課題をしなくて良いという結果が得られ(泣く事が強化され)、次にやりたくない課題があった時に泣くという行動が増えてしまいます。

その変わりに、休憩を依頼する方法、「休憩したいよ」という言葉を教えます。
「手をあげて、休憩したいよ、って言ってごらん」と適切な行動を引き出す手助け=プロンプトを行います。
手をあげて「休憩したいよ」と言えたら、「上手に言えたね」と言って休憩をあげます。
この例のポイントは「泣く」という困った行動の機能と「休憩したいよ」と言う行動の機能が同じく「逃避」だと言う事です。
自分の気持ちを言葉で言える練習をすることにより「泣く」という困った行動は減っていきます。
もちろん休憩ばかりしていたら課題が進まないのでこちらも工夫する必要があります。
まず1つめの工夫は課題そのものを見直すことです。
課題はお子さんにとって難しすぎないでしょうか?お子さんが楽しめる工夫はできていますか?もし難しすぎるのであれば今まで以上にプロンプトをしてお子さんに成功体験を積ませてあげることが大切です。
お絵かきの課題なら恐竜や電車などそのお子さんが興味のある題材を選びましょう。
鉛筆で描くかクレヨンで描くか絵の具で描くかをお子さんに選んでもらうものいい方法です。
2つ目の工夫はご褒美の頻度を検討し直すことです。
お子さんがモチベーションが保てるようご褒美の頻度を上げましょう。
今まよりも細切れにご褒美を与えることによりお子さんのモチベーションを高く長く保つことができます。
困った行動の機能が「注目」なら?

このお子さんは先生がお子さんに注目していないときにわざと席を立って笑いながら先生に視線を送っています。
わざと席を立って笑いながら先生に視線を送る、と言うのが困った行動です。
まずここで大切なのはお子さんに注目を一切与えないことです。
「ダメだよ、座って」「こら!」などの叱るという行為も、お子さんの行動の機能が「注目」ならご褒美(強化子)になりえます。
じっと机で待ち、適切な行動(椅子に座って課題に取り組む姿勢を見せること)をしたら何事もなかったように課題を再開しましょう。
その代わりに課題に真面目に取り組んだり、待ち時間に離席しなかったりしたら思いっきり褒めて注目してあげましょう。
また、お子さんには「先生見て!」という同じ機能で、適切な行動を教えましょう。
離席せずに課題に取り組んでいるとき、例えばつみきでお城を作れた時などに「先生見て!って言ってごらん」と適切な行動を引き出す手助け=プロンプトを行います。
「先生見て!」と言えたら「上手に言えたね」と思いっ切り褒めて注目してあげましょう。
この例のポイントは「わざと席を立って笑いながら先生に視線を送る」という行動の機能と「先生見て!」と言う行動の機能が同じだと言う事です。
自分の気持ちを言葉で伝える練習をすることにより「注目欲しさにわざと離席する」という困った行動は減っていきます。
気をつけたい消去バースト

困った行動を改善させようと働きかけると、一時的にその問題行動が悪化することがあります。
お子さんは注目が欲しくて離席しているのに先生は全く自分の方を見てくれません。
机をひっくり返そうとしたり、先生を叩いたり、だんだんエスカレートしていきます。
その行動をしても効果がないとわかるとその困った行動は最終的には減って行きますが、最初はもっとやれば注目してもらえるだろうと一時的に行動が増えることを消去バーストと言います。
消去バーストはある程度避けられないものですが、なるべく抑えるために
1) なるべく頻回に良い行動を褒めてあげること
2) 消去単体で使用せずその行動と同じ機能を持つ適切な行動を教える
が大切です。
困った行動の機能が「自己刺激」なら?

自閉症のお子さんは自分の内なる感覚を楽しむ傾向があり、ハンドフラッピング、自分の手を噛んだり頭を叩いたりする自傷行為、穴を覗き込む、独り言を言う、などその症状は様々です。
このお子さんは、先生が課題の準備をしているときに手をパタパタとハンドフラッピングしています。
人に迷惑をかける行為ではありませんが、社会的に見て人から違和感を持たれますし、自己刺激にふけることで遊びや課題などに取り組む時間が奪われ、成長する機会を失ってしまいますのでなるべく減らしていけるよう取り組んでいきましょう。
その方法として「他の許容可能な方法を教える」というものがあります。

例えばペグボードと言うピンを穴に挿していくおもちゃで遊んでもらいましょう。
ペグを持っているときにはハンドフラッピングできないのと、ペグをさすこと自体が刺激となって楽しいのでハンドフラッピングを抑えることができます。

また少しずつ、自己刺激を自分で意図的に抑える練習もしていきましょう。
「手はお膝だよ」と言ってお子さんの手をお子さんの膝の上に乗せ、先生の手は軽くお子さんの手に添えます。
「3秒数えたらおしまいだよ、いーち、にーい、さーん、おしまい!」と膝の上に手を置けたことを褒めて強化します。
このように身体で行う手助けのことを身体プロンプトと言います。
上手にできたら少しづつ手を膝における時間を長くし、身体プロンプトも減らしていきましょう。
行動の機能を考えて、行動改善計画をたてよう!
このように行動には大きく分けて、獲得・逃避・注目・自己刺激と言う4つの行動があります。
困った行動を減らすには、その困った行動がどんな機能を持つかを分析し、困った行動を消去することで減らすと同時に、同じ機能を持つ適切な行動を教えてあげることが大切です。
Togetherのセミナーでは、もっと詳しく行動について学び、実際のセラピーのビデオや見たり、例を聞くことができます。ぜひABAを学び、実践してみてください。
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